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<HP休止中更新>CLANNAD二次創作「水の音が聞こえない」(11)
2010/08/19(Thu)
*ただいまHP休止中につき、ブログのコメント欄を閉じています。 


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 え~、一ヶ月に一回更新が普通となりつつありますが(苦笑)、如何お過ごしでしょうか。今回は久しぶりに二次創作小説の続きです。前回が2月27日という(超苦笑)、大変申し訳ない停滞ぶりですが、よければお読み下さい!

 前回までのあらすじは、智代と岡崎がデートして、映画館に向かうところです。これでバッチリですね!(オイコラ)


~お読みになる前に~ <お願いです!>

・これはゲームブランド「Key」が発売した「CLANNAD」の二次創作小説です。発売元および関連会社と著者は関係ありません。

・ストーリーは「智代ルート」を基としています。

・執筆にあたり参考にしたのはネットで収集した「CLANNAD」についての情報です。それに著者の案が加えられた形となっています。なのでストーリー、および若干キャラクターに変更点があります。変更していない部分はネタバレですので何卒お気をつけ下さい。

・なるたけ原作のキャラクター像を順守していますが、主人公である岡崎だけは一人称という語り口なためどうしても著者の性格資質が混ざってしまい、印象に大きな違いが表れるかと思います。原作のテーマとずれがあるかもしれませんが、著者なりの「CLANNAD」に対する見解を示しています。

・現時点で登場、またはそれが確定しているのは岡崎、智代、春原、杏、椋、岡崎の親父です。

・問題があれば削除します。お知らせ下さい。




 では、どうぞ!
 

 店では他愛のない話をした。近所の犬が毎朝ひと吼えするとか、友達が菓子ばかり食べるのにまったく太らないとか、そういう坂上の日常ごとに熱心でない態度をとっては注意され、春原との馬鹿話を披露すると真顔で説教され、時間はあっという間に流れていく。

 外に出ると生ぬるい風が通り過ぎ、背のひくい緑をゆらす。空は灰色のままだった。
 映画館まで坂上のすこし後ろを歩いた。奴は時々振り向いたり、速度を落としたりしたが、無理に並ばなかった。
 小屋の中は人があふれ、波に押されてイスへ座る。カップルが多いような気がした。
 
 席は前のほう、右より。ややまぶしい。坂上はしずかに予告を見ている。俺はコーラを一口飲み、まぶたを落とした。遠慮がちな話し声、ものの擦れる音、咳。それらがいい子守歌になりかけたところ、ひじでつつかれる。仕方なく目を開けて、そのままつぶやいた。「長いな……最後まで持つかな」
「寝てはだめだぞ。話ができなくなるからな」と、坂上。「そういえば『ウサギ女は夜を待つ』は見たのか?」
 瞬間、俺は顔をしかめた。その後苦笑し、目をそらす。まもなくため息が聞こえて、俺は腕をひねられた。


『トムはちいさなころから見栄っ張りだった。大人になってもそれは変わらず、幼馴染で初恋の人、マーサに対して、ちいさな自分を大きく大きく見せようとやっきになった。彼女はそんな彼に嫌気が差し、離れていった。残されたトムの悲しみを包むのは、空虚な見栄だけ。それをぬくもりに、彼は今日も眠りにつくのだ』
 

 ナレーションがエリマキ男である主人公、トム・パークェルの身の上話を綴りつつ、カメラは現在の彼を映し出してゆく。一流企業に勤める四十路のサラリーマン。独身。同僚には絢爛たるアフターの予定を並べるが、その実いつも独りで、家に帰るとマーサとの思い出を留めたアルバムをめくっては酒を飲み、彼女が好きだったシューベルトを子守歌に泣き眠る。
 始まって三十分くらい、哀れなトムの日常描写に涙する者が徐々に現れ、一時間を越えたころには、はっきりとすすり泣く声が聞こえた。
 俺はなんとも居心地の悪さを感じつつ、隣に目をやった。坂上は背筋を伸ばし、まっすぐな瞳でスクリーンを見つめていた。なので仕方なく、ふたたびトムの人生を追うことにした。

 小屋が明るくなり、騒がしくなっても坂上は座ったままだった。相変わらず背筋を伸ばしたまま、膝に手を置き目を閉じて、余韻にひたっている。
 どうすべきか迷い、頭をかきつつ場内を見回すと、後ろのほう、座ったままこちらを見やる、帽子にサングラスの男と目が合った。
 俺が訝しげに見返すとそいつはすぐに目を逸らす。歩み寄ろうとしたが、不意に肩を叩かれた。坂上だった。
「待たせたな。出よう」
「ああ……」
 言いながら振り返るともう男の姿はなく、俺はさっさと出て行こうとする坂上の後をあわてて追いかけた。


 小屋を出て、しばらく歩いても坂上は黙ったまま、しかし嬉しそうな顔をしては振り返り、こちらをチラチラ見やる。行き先は奴任せだしどこでもいいが、好い加減口をきいて欲しかった俺は、やむなく声をかけた。「……そんなにあの映画が面白かったのか?」
 すると坂上はぴたりと足を止め、すこしムッとした顔で言った。「そういう聞き方はよくないぞ岡崎。もう一度、やり直してみてくれ」
「やり直すって……何をだ」俺は訝しげに訊き返す。
「上品さがないということだ」坂上は答えた。「お前のその言い方は、『俺はまったく心を動かされなかったが、どうもお前はそうではないようだ。その不思議な様子について説明して欲しい』というふうに聞こえる」
 俺は口を開けた後、苦笑した。その通りだったからだ。
 その笑いがまた奴のセンサーにひっかかったらしく、眉をひそめて俺に寄った。「やっぱりそうか。失礼な奴だな。そもそもほんとうに、何も感じなかったのか?」
 信じられない、というように俺の顔を覗き込んだ。なのでやや体を引き、歩道脇の白柵に腰を下ろしつつ、答える。
「不幸なおっさんの、不幸な生活を見せられて、嫌な気分になった……ってのが俺の感想だ」
「それは読みが浅い」真顔で即答された。
 俺は呆れつつ言葉を返す。
「読みも何も、ただ俺が感じたことだよ」すこし顔をしかめた。「俺はハッピーエンドが好きなんだ。単なる趣味の相違だろ」
 すると坂上はおおきくかぶりをふった。
「トムは確かに不幸な日常を送っていたが、最後に気づくじゃないか」  
 俺は坂上を見上げた。奴は俺が疑問符を浮かべていることにため息をつき、仕方なくというふうに話を続ける。
「見栄をはって実のない生き方をしてきたことを反省し、自分自身に向き合って歩き出すだろう。映画の後、彼のほんとうの人生が始まるんだ。一時の幸せな状態を示したものより、こちらのほうが真実のハッピーエンドだと私は思う」
 俺はアスファルトのすき間から生えるねこじゃらしを抜き取ると指でもてあそび、しばらく後、それを坂上に向けてくるくる回した。
「マーサはどうなる」
「えっ?」
 口を開けてこちらを見下ろす坂上に、俺は続けた。
「あの女はトムが好きだったんだろ。けっきょくは愛想を尽かしてヨソにいったが……最後まで期待してたように見える」
「そうだな」坂上は子供のようにうなずいた。「でもマーサの旦那は好い人だ。彼女は幸せになれる」
「俺はそう思わん」ねこじゃらしのふさを乱暴につまみ、はじいた。「もしなれたとしたら、それは大して奴に惚れてなかっただけだ」
 坂上はやや目を見開いて、しばらく下を向いた後、俺の隣に腰を下ろした。近かったのですこし横にずれたが、奴はすぐ同じ分だけ寄った。
「質問がある」坂上は小学生のような顔で言った。
「何だ」俺はつっけんどんに返す。
「トムの幸せとは、何だと思う?」
「マーサと結ばれることだ」
「マーサの幸せは?」
「トムと結ばれること」
「それが叶わなかったから、ふたりは不幸だということか」
「当たり前だろうが。後のは妥協だ」 
 俺の言葉を聞いて、すこしの間ぽかんとした後、坂上はクスクス堪え切れないといった風に笑みを漏らし、やがてはっきりと笑い出して、とうとう馬鹿笑いにまでなった。道行く輩が俺たちのほうをチラチラ見やる。俺は顔をしかめた。
「……何がそんなにおかしいんだ」
 不機嫌に言葉を投げると、奴は涙を拭きつつ、「すまん」と頭を下げながらもなおおかしそうに、言った。「岡崎……お前は単純だな」
 俺はため息をつき、すこしイラついて脚をかく。「悪かったな。複雑でなくて」
「いや」
 坂上はおおきく髪をゆらす。そして勢いよく立ち上がり、白く華奢な手を差し出して、子供のような笑顔で言った。「行こう。もっとお前と話したい。……なんだかホッとするんだ」

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