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ハリウッド映画と日本映画(終)
2007/08/18(Sat)
 また間が空いてしまいましたが、続きです。


 前回の終わり、日本映画はハリウッド映画に比べて「本当らしさ」を表すのが下手だと書きました。以下それを具体的に述べたいと思います。

 まず「本当らしさ」とは何か…何についてか…ですが、これも前回書きましたように、人間のリアクションが本当らしいということです。物語中起こる出来事に対して人間の反応が、実際こうだ、実際こうだろう、実際こうしたい、実際こうすべきだという、観客の経験、それに基づく推測、そして願望、信念に適っていると、本当らしさを感じるのだと私は思っています。

 ハリウッド映画は、これらを押さえています。いわゆるB級といわれるようなものでも、程度の差はあれこれらから生まれる「本当らしさ」を保っているのです。だから面白く多くの人が見られるわけで、決してけれんの部分がたくさん盛り込まれているからではないのです。世界の色々な人々が感情移入できる下地がきちんと作られているから、そのけれんを楽しめるということです。もしキャラクターの行動が理解できなければ、そのキャラクターに同化できず、物語には入り込めません。

 で、日本映画の多くは…私が見た限りですが、テレビドラマを含め非常にこの「本当らしさ」に対する感性が鈍いです(ただし黒澤明監督を始めとする一部の優れた作り手は除く)。

 ドラマを構成する脚本、演技、美術、カメラ、衣装、小道具、そして演出…殆どの点が「本当らしさ」を感じられることに重きをおかず作られている。私にはそうとしか思えないのです。

 先日もひどい映画をみました。まず冒頭、カメラがパン(カメラを移動させずに左右に振る事)するのですが、それに何の意味もないのです。そのショットが、物語の情報を何も伝えておらず、そればかりか美もない。つまり何の意味もない、何も考えられていない、ただ何となく撮ったショットなのです。

 演技も脚本をただつっかえずに喋っているだけで、そこに人間の存在が感じられない、酷いものでした。

 他にも色々ありますが、一番悪いのは演出ですそれらにOKを出した、ということは監督にそういう眼しかないということですから。

 
「一寸待て。映画の本当らしさについての話じゃないのか、出来が良い悪いの話になってるぞ」…と思われるかもしれませんが、映画の出来と本当らしさの問題は不離不分であって、別個に語れるものではありません。

 また本当らしさが強いというのはドキュメンタリー・タッチのことを指しません。なのでドキュメンタリーや、それ風の映画が表現として高尚だ、ということではないのです。最初に述べたように、願望や推測、信念もうまく混ぜてあるのが本当「らしさ」に繋がるわけですから。

 

 例えばあまり収入のない、若い独身サラリーマンを描くとします。それをどの辺りまで掘り下げて考えるかで、映画の迫真性も変わってくるのです。

 

 彼の実家も余り裕福でない、さらに余り仲がよくないので金銭的援助を求める事もままならないとすると、彼は自分の収入に見合った安いアパートに住み、スーツも安いものでしかも余り持っていない。靴も同じでしょう。
 性格が好い加減で粗雑だとすると、部屋は汚いし、何ヶ月も同じごみや服が散乱し、流しなど見るに耐えないものになっているはずです。食事は全てインスタントで、たまに外食。

 そして好い加減な性格のため交友関係を維持するために金銭や時間や愛情を割かないため、よく愛想を吐かされる、しかしその好い加減な性格もあって余り気にせず、おおらかな所もあるため、よりを戻したり、新たな友や恋人が出来たりする…。


 切りがないのでやめますが、こういう風に人間ひとつ描くのにも、知識を元に想像力を働かせ、人間の真実に迫る作業が創作なのです。ディフォルメが強いものでも、大事な部分をきちんと押さえておく必要があります。それができていないものは、質が高くないのではないでしょうか…と言わざるを得ません。 

 上記のサラリーマンの人間像を掘り下げていくに従って、それに見合う衣装、美術、小道具、演技が必然的に本当らしさに向かって深められていくのです。上に描いてある段階でも、まっさらなスーツを着せて画面に登場させるなどという愚行をおかすわけはないのです。しかしテレビドラマをみるとそういうことをやっていたりする。これは本当らしさなどどうでも良い、と作り手が思っているのではないでしょうか。


 いや思っていない、仕事で金の関係でそういう風にしないといけないんだ、という意見もあるかもしれませんが、そんな所に同情する事に意味は、我々観客にはないのです。「こういう事情だから仕方ないよな」という意見を出す事が状況の改善に繋がるでしょうか? 批判が世に多く上がり、視聴率なり観客動員数が下がる事が起これば、お金を出す人も会社も考えるでしょうから、批判意見を多く出す方が意味がある…と私は考えますので、同情はしません。
 
 若し熱意や才能があっても生活のため不承不承そういうことを続けている方がいらっしゃったら、チャンスが来るまで、ご自身の腕を磨き情熱を胸に仕舞っておいて下さい、応援します…。 
 
 

 とにかくそのような本当らしさをきちんと押さえておけば、必然的に良い映画になるものであると、私は考えています。


 日本映画の関係者には、奮起して頂きたいです。
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コメント
-  -
 映画の目的が自分の現実とは違う何か(他人の人生等)を覗く事にあるとすれば、求められる物は非現実である。そして、ハルヒンさんが書く“本当らしさ”は、そういった非現実を現実の視点から評価する為に求められる。と言うのが私の考えです。
 私は日本映画をあまり見ないので良く解かりませんが、空間と時間を制限しながら、多くの観客にとって非現実である条件を追求する事に気を取られ、観客に観せる工夫(本当らしさ)を忘れがちなのかもしれません。
 私も何か映像作品を作る機会があったら、気を付けようと思います。

 キャラクター紹介有難う御座いました。登場するキャラクターの名前を思い出せず、何度も登場部分を探したりしていたので助かります。
 それと、新世界の神の元はデスノートです。丁度、顔と名前の一致がデスノートに書き込む条件だったので。
2007/08/18 21:35  | URL | ふみお #LkZag.iM[ 編集]
- 返信(ふみおさん) -
 まず、この長い文を読んで下さった事に感謝します。濃い記事ですからね…。有難うございましたw。

>映画の目的が自分の現実とは違う何か(他人の人生等)を覗く事にあるとすれば、求められる物は非現実である。そして、ハルヒンさんが書く“本当らしさ”は、そういった非現実を現実の視点から評価する為に求められる。と言うのが私の考えです。

 この表現がふみおさんらしいw。

 
 私が長々述べてきた事は簡単に言ってしまうと「嘘を信じさせるもっともらしい事を、できるだけたくさん混ぜよ」ということなんです。…何かすごい単純な意見ですね(苦笑)。


>新世界の神の元はデスノートです。

 いや、これは解らないwwww。デスノートは知ってますが(笑)。ちなみに私はヒカルの碁の方が好きです(ぁ。

 キャラ表は作ろうと思っていたので…。背中を押して頂いた形ですね。どうもサンクスですw。

 しかしいつ完結するのか…(汗。


 コメント有難うございましたw。
2007/08/19 07:00  | URL | ハルヒン #JalddpaA[ 編集]
-  -
>「嘘を信じさせるもっともらしい事を、できるだけたくさん混ぜよ」
 ハルヒンさんの場合は非現実が在る事を前提にしているのではないかなと思いました。私はその前提の部分に触れただけで、実は似たような事を言っているのだと思います。私の考えの後半部分を具体的にしたら、上に引用した言葉になるのではないでしょうか。

 単純である事はとても大切な事だと思いますよ。複雑な物を単純な物へと還元していくのは、問題解決の基本手法です。むしろ、単純な事を複雑に言っている私がどうしようもないです。

 最後に上のコメントで私が何を言いたかったかと言うと、元ネタはデスノートッ!……では無く、映画を創る人に求められる物は最終的に、非現実と現実の境界を探す事なんだと思う、と言う事でした。
 そして、何処まで非現実を強調するのか、何処まで現実らしさを残すのか。そう言う事を考え、それを個性に出来る制作者に私はなりたいなと。
 総合するとこんな感じです。

 文章が妙に複雑になって申し訳ないです。
2007/08/19 09:39  | URL | ふみお #LkZag.iM[ 編集]
- 返信(ふみおさん) -
>実は似たような事を言っているのだと思います。

 私もそう思っていますよw。

 言い方が違うだけで同じ事…或いは似た事を言っている、というのは結構ありますよね、人と話していると。この違い…要するに対象への捉え方の違いが個性の差、なんですよね。だから「実は同じことを言っているのではない」…とも言えます。


>非現実と現実の境界を探す事なんだと思う、と言う事でした。
 そして、何処まで非現実を強調するのか、何処まで現実らしさを残すのか
 
 これは全くその通りですよ。映画に限らず全ての表現がそうです。

 一寸内容が面白すぎて膨大な文になるのでここで終わります(苦笑)。いやぁ…私こういう話好きなんですよw。

 また今度、お話させて頂きます。

 将来何の作り手になられるかは解りませんが、今現在でもこれだけしっかり考えておられるふみお氏は、きっといい表現者になりますよ。うんw。

 
 コメントありがとうございましたw。
2007/08/20 00:53  | URL | ハルヒン #JalddpaA[ 編集]
- バイトの休憩時間から -
ふ~~なんとか読み終えましたたw

いや~内容が濃いというより深いって感じですねw

本当らしさを混ぜた説明は「なるほど」と思いましたw

ハリウッドの作品は同調できる部分織り込んでありますよねw
今思うと映画類で日本の監督がやってるもので最後まで見たいと思った作品はほとんどないですね~
なんか途中で「こりゃないやろ」と飽きてしまうことが多々あったりw

ドラマはあんまみないのでなにもいえませんが、最近みたライフというドラマが嫌い、というより見たくなかったりします。
マンガをリアル化したものですが、なんかイジメも度を越すとみてて腹立たしくなってみたくなくなるんです。
まぁ私の感性がおかしいだけかもしれませんが(苦笑


いってることが意味不明になってしまいましだ・・・このへんで失礼~
2007/08/21 16:21  | URL | 銀髪 #zgUyPM1.[ 編集]
- 返信(銀さん) -
 いつもコメント有難うございます~w。貴重な休憩時間に読んで頂き感謝しますW。

  
>今思うと映画類で日本の監督がやってるもので最後まで見たいと思った作品はほとんどないですね~
なんか途中で「こりゃないやろ」と飽きてしまうことが多々あったりw

 それは正に本当らしさが欠けているからですよ。

 脚本が粗い、演技が粗い、その他つくりが好い加減だと「これはフィクションだけどある意味本当の話として真剣にみよう」という気がなくなるんですよ。作り手の才能の有無以前に情熱が無いサラリーマン的な仕事、または変に芸術ぶったその実深みが無い映画などは、良くないと思うんですよ…。

 勿論日本映画にも良いものはありますけどね。量としては少ないのが、残念だなぁと思いますね。
 

>なんかイジメも度を越すとみてて腹立たしくなってみたくなくなるんです。
まぁ私の感性がおかしいだけかもしれませんが(苦笑


 銀さんの感性は全く正しいですよ。そんなシーンを多く盛るのは間違ってます。

 日本では伝統的と言って良いくらいに、ドラマで弱者が困難に落ち込むシーンを盛り込むクセがあります。これは最低だと思っているんですよ。

 これを次回の題材にしましょうかね…。
  

 コメント有難うございましたw。
2007/08/22 06:12  | URL | ハルヒン #JalddpaA[ 編集]
- >返信「ハルヒンさん」 -
>いつもコメント有難うございます~w

いえいえw今回はコメするのが遅れまして申し訳ないです。

>もちろん日本映画・・・~・・・と思いますね。

そうですね~日本映画の中にもいいものはあるけど、悪いものとハリウッドもののインパクトで影に隠れがちな気がします。

>日本では・・・~・・・と思っているんですよ。

私もそう思います。
弱者が強者やそのとりまきによくイジメられて最後にはそれを乗り切り解決したみたいなのをよくする傾向ありますが、実際問題イジメはドラマのようにのりきれるものじゃないですよ。イジメられてる人がドラマの主人公のように強く、手をさしのべてくれる人がいるような環境がある人ばかりじゃないですもん。
2007/08/22 16:32  | URL | 銀髪 #zgUyPM1.[ 編集]
- 返信(銀さん) -
>実際問題イジメはドラマのようにのりきれるものじゃないですよ。イジメられてる人がドラマの主人公のように強く、手をさしのべてくれる人がいるような環境がある人ばかりじゃないですもん。

 
 銀さんの仰っているのは多分、フィクションの「問題提起する表現」としての側面ですね。

 で、フィクションにはもうひとつ…というかこれがほとんどを占めますが「娯楽」という面があります。

 、娯楽としてイジメをみせている…ということも、フィクションには多くあるのですよ。

 もしくはそういう意図では無いが、出来が悪いか。どちらかですね。


 これらはともかく、銀さんの意見は「果たしてそんなみせ方で、実際辛い目に遭っている子の現実が変わるのか?」ということですよね。

 
 これは難しい問題なんですよ。

 良作ということを前提にしても、それが現実を変えられるのか…。私は変えられる、変えてやると思って作るのが表現者だと思いますが、実際は、全部は変えられないでしょう。

 ただ繰り返しになりますが、変えられるという意識を持って作るべきだし、そういう想いで作られた作品は力を持つと思います。


 これらに関連した話を次回の更新時に致します。

 
 コメント有難うございましたw。
 
2007/08/23 01:14  | URL | ハルヒン #JalddpaA[ 編集]
- 管理人のみ閲覧できます -
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2007/08/24 22:53  | | #[ 編集]
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